新年度に入り、ひょうご歴史研究室は一部、研究組織を刷新しました。設立当初以来、設置されていた『播磨国風土記』研究班を終了し、あらたに「大阪湾岸と淡路の地域史」研究班を立ち上げたのです。前年11月に『「播磨国風土記」の古代史』(神戸新聞総合出版センター)が刊行され、この間の調査研究の成果がひろく県民に還元されたと判断したのが、その理由です。もともと当研究室の発足に際し、節目のある活動をすることで、ひろく県内各地の歴史遺産活用と地域振興に資することを使命と謳っていたことからすれば、やや遅きに失した面もあるかも知れませんが、『「播磨国風土記」の古代史』が好評を得ていることからすれば、適切な移行であったと判断しています。

なぜ「大阪湾岸と淡路の地域史」という研究テーマに移行したかという点では、風土記班が、淡路島日本遺産委員会とこの間、協力関係を保っていたことと並んで、令和2年度からあらたに研究室が、世界遺産登録を目指す「鳴門海峡の渦潮」調査研究プロジェクトを始めたことが大きな理由です。「渦潮」は、淡路島と紀淡海峡・明石海峡がなければ発生しない現象で、その自然的価値と文化的価値双方の解明は、大阪湾を抜きに成立しません。

今年3月の「鳴門海峡の渦潮」世界遺産登録推進会議の総会では、研究室として中間報告をしましたが、飯泉嘉門徳島県知事と並んで齋藤元彦兵庫県知事も出席され、直接、聞いていただきました。席上、齋藤知事から2025年の大阪関西万博も視野に入れ、大阪湾に注目する意義が強調されましたが、その点でも、「大阪湾岸と淡路の地域史」研究班の発足は、時宜にかなったものと理解します。

引き続き、ご支援ご鞭撻を心よりお願い申し上げます。

ひょうご歴史研究室室長 藪田貫(兵庫県立歴史博物館館長)