神戸の北、六甲山(ろっこうさん)を越えたところに唐櫃(からと)というところがあります。そのむかし、神功皇后(じんぐうこうごう)という人が朝鮮半島(ちょうせんはんとう)で戦争をして帰ってきたときに、武器や衣服といっしょに、雌雄(しゆう)二羽の黄金の鶏(にわとり)を石の唐びつ(唐櫃)に納めてうめたので、ここを唐櫃と呼ぶようになったと伝えられています。

唐びつがうめられたと伝えられるところには、後に石の祠(ほこら)がまつられるようになりました。そのまわりは大きな森になっています。これをヌノド(布土)の森と人々は呼んでいます。また、唐櫃には、節分の夜、子供たちが鶏の鳴きまねをする行事が残されています。村の神社で、「トテコロー。」「クー、クー。」と鳴きまねをするのです。

雌雄(しゆう)二羽の黄金の鶏(にわとり)のイメージ画像

この金の鶏は、村がよほどおとろえたときでないかぎり、掘り出してはならないと伝えられています。また、唐びつが埋められたところは、本当は森の中のもう少し北にある大きな石の下だとも伝えられています。この大石は大事にしないといけないとされていて、あるとき、村人がこの大石にこしかけて休んだので、病気になって苦しんだと言われています。

(『神戸の伝説』をもとに作成)