神戸市西区に雄岡山(おっこさん)と雌岡山(めっこさん)という、美しい山があります。高さも形も、とてもよく似た二つの山は、古くから「神様の山」として人々に大切にされてきました。二つの山は遠くからもよく見えて、道行く人々の目印にもなります。
こんなによく似た二つの山が、どうやってできたのでしょうか。それにはこんなお話が伝わっています。
はるかな昔、このあたりに男の神様と女の神様がいました。毎日、何ごともなく静かにくらしていましたが、どうにもたいくつでなりません。ある日、男神はこんなことを思いつきました。
「二人で山をつくって、高さ比べをしてみないか」
「それはおもしろそうね」
二人はさっそく、山のしんになる大きな鉄の棒を用意しました。大地に鉄棒をつき立てて、そのまわりに土をもり上げるのです。
二人の神様は、鉄棒のまわりにせっせと土をもり上げてゆきました。盛り上げるたびに、美しい山の形ができあがってきます。二人とも、同じように土をもり上げてゆくので、なかなか勝負はつきそうにありませんでした。
その時です。「ボキッ」というものすごい音がひびきました。男神の山の心棒が、まん中からおれてしまったのです。大きな鉄の棒はごろごろと転がり、地ひびきをたててふもとに落ちました。これではもう、土をもり上げることができません。
「勝負は私の勝ちね」
女神はにっこりしながらそう言うと、最後まで土をもり上げて、山をつくりおわりました。
雌岡山の方が高くて大きいのには、こんなわけがあったのです。
男神がおれた鉄の棒を拾い上げてみると、山のふもとには、大きな穴があいてしまっていました。やがて、そこに水がたまって大きな池になったので、人々は「金棒池」と呼ぶようになったということです。
やがて雌岡山には、天から大己貴神(おおなむちのかみ)が下ってきて、ここで百八十一柱の神々を生みました。そういうわけで、このあたりの土地は「神出(かんで)」とよばれているのです。