研究員のブログ
2020年11月17日
研究員のリレートーク
研究員のリレートーク 第14回 -赤松氏と山城研究班から-「山城ブームの裏側で」
ひょうご歴史研究室共同研究員 藤木 透
その昔、城跡を訪れるのは一部の城郭研究者ぐらいだったように思いますが、近年は山城ブーム、戦国ブームが続いており、マニアを含め城好きの人が増えたようです。またハイキング愛好家にとっても山城をめぐるコースは単に山歩きだけではない魅力があるようです。歴史研究の上においても、山城そのものが研究の主対象となってきています。山城では現地をみれば、堀や土塁などの遺構が目視でき、専門家でなくとも、かつての合戦や戦国時代に想像を膨らませることできるという魅力があるのでしょう。TV番組でも城や戦国をテーマにしたものが数多くあり、みなさんもご覧になったことがあるのはないでしょうか。
昨年度からは西播磨県民局が「山城復活プロジェクト」として、西播磨地区の山城を対象に、山城を仮想復元したAR作成やモニターツアーなどを企画し、一段と注目が集まっています。先月佐用町立図書館が企画した「戦国佐用の山城」展では2週間で約800人の観覧があり、遠くは東京から来られた方もあったとか。
さて、赤松氏と山城研究班では、昨年度まで上郡町の赤松館跡を、今年度からはたつの市の城山城跡を主な研究テーマとしています。
私はこの研究に参加させていただく一方、職務上、佐用町にある利神(りかん)城跡の国指定推進事業を抱え、当研究室をはじめ多くの皆さんの支援を得て、平成29年には無事国指定史跡となりました。その後、令和元年度まで保存活用計画を策定、今年度からは史跡保存のための応急対策工事を始めることになり、近く工事が始まる予定です。
利神城跡は戦国期には赤松氏一族の別所氏の居城でしたが、近世初頭に姫路城の6支城の一つとして池田氏によって再整備が行われ、山上と麓に石垣づくりの遺構がよく残っているのが特徴です。しかし約30年で廃城となり、400年近く修理等の手が入っていないことから、石垣の崩落や変形、斜面の流出が至る所に見られ、利神城跡は登山禁止の措置が取られています。
この間、多くの方から「利神城跡にはいつ登れるのですか」という問い合わせをいただいています。しかし、史跡の保護上も登山者の危険防止上も登山禁止は必要な措置であり、応急的対策工事が最優先であるためご理解をお願いしているところです。応急対策工事ができ、一定の安全性が確保できたエリアについては限定的に公開することも可能となるでしょう。
とはいえ、利神城跡はこれまでほとんど手が付けられておらず、史跡の保護をしながらの工事はまさに0からのスタートといっても過言ではありません。大半が私有地で急峻な山、今後の整備も容易ではなく、課題は山積みです。ありがたい山城ブームですが、結構、・・・大変なんです。登山を心待ちにされている方、もうしばらくお待ちください。