研究員のブログ
2020年8月5日
研究員のリレートーク
研究員のリレートーク 第7回 -コア会議メンバーから- 「ひょうごの歴史研究と歴史遺産の活用」
ひょうご歴史研究室顧問(兵庫県企画県民部地域創生局参事) 山下史朗
退職しました
歴史研究室も創設6年目に突入しました。
私ごとで恐縮ですが、これまで当研究室には事務局の一員として参加させていただいてきましたが、本年3月末に38年間勤めてきた県教育委員会の文化財課を最後に定年退職しました。
文化財課在職中は藪田室長、坂江研究コーディネーターをはじめ、研究室の皆さんや、博物館関係者、市町文化財関係者、研究室の活動にご支援をいただいている皆さんには大変お世話になりました。
この場をお借りして、お礼申し上げます。
本年4月からは県企画県民部地域創生局という部署で再任用職員として勤めておりますが、今後とも研究室のお手伝いをさせていただけることになりましたので、引き続きよろしくお願いします。
ひょうご歴史研究室の役割
さて、当研究室は、地域の歴史の調査・研究を通じ、県民の郷土の歴史に関する理解をさらに深め、教育、学術及び「ふるさと意識」に根ざしたひょうごの文化の継承・発展に資するため、平成27年4月に設置されました。一番の特徴としては、「研究室」を名乗っていながら、調査・研究、普及・啓発に止まらず、活用にも取り組んでいくことを目標としているところにあります。
県教育委員会では、平成15年3月に歴史文化遺産活用構想をまとめ、歴史文化遺産を活用することで保存を進める方針を打ち出しました。ここで「歴史文化遺産」という言葉を使ったのは、日常の業務を進める中で、一般には「文化財」は規制されるものという負のイメージが付きまとっているのを感じていたためでした。文化財に指定されているもの以外にも、まだ価値が明らかにされていないだけで、身の回りに大切な「遺産」がたくさんあります。そのことに気付いていただき、そうした遺産を活かしていくことを重点に置きました。この背景には、阪神・淡路大震災という未曾有の災害を経験したこともあり、平成15年度から3年間をかけて、県内7ブロックの地域単位で意見交換や事例発表会などを続けていったことで、県と市町(兵庫県には村がありません。)の文化財担当者の間での信頼関係を築いていけたことが大きかったと思います。このあたりの経緯については『紀要』第5号の「兵庫県の歴史文化遺産活用の取組みとひょうご歴史研究室の役割」に述べていますのでご参照いただければと思います。
兵庫県の地域創生の取組み
新しい職場の地域創生局は、県として、急激な少子高齢化や人口減少という課題に対処し、将来にわたって活力ある個性豊かな地域づくりをすすめるために設置されている部署です。中でも私の所属する地域資源担当は、創設されてまだ4年目という日の浅さですが、県内の多彩な文化遺産、自然遺産を適切に保全するとともに、地域活性化の起爆剤として最大限に活用するため、地域とともに取り組もうとしています。
これらの施策の根拠となるのが、平成27年3月に制定された「兵庫県地域創生条例」です。そこには、4つの理念を掲げていますが、その3番目に、「地域の豊かな自然環境、歴史文化等により育まれた人としての資質、地域社会での支え合い及びふるさとへの愛着に立脚した生活と心のゆたかさを実現すること。」を掲げています。
具体的には何をするのか、何ができるのかということになるのですが、平成27年の「第一期兵庫県地域創生戦略」に続き、本年からは「第二期兵庫県地域創生戦略」にとりかかっています。また、これまで「地域再生大作戦」をはじめ、県民局・県民センターや各市町を中心に、地域ごとにさまざまな地域振興の取り組みが進められていますが、歴史文化遺産関連では、令和元年5月に「兵庫県地域遺産活用指針」として活用の方向性を示しており(図1)、今後は、地域で活かし次代につなぐための広域的な施策にとりかかろうとしています。
こころを繋げる調査・研究を
歴史研究室では、調査研究を通じて、このうち主に1の「地域遺産を発見する」に取り組んでいますが、フォーラム等を通じて、3の「地域遺産の価値を磨く」や、4の「地域遺産の価値を発信する」にも取り組んでいるところです。今後ますます期待が高まってくることは確かですが、そのためには、我々にできることからやっていくこと、そしてそれを地域とともに続けていくことが大事だと思います。それには何よりも「こころを繋げていく」ような調査・研究に取り組んでいきたいと願っていますので、皆様どうかご支援・ご協力をよろしくお願いします。