たたら・製鉄研究班の本年度第3回の研究会が、2017年2月18日(土)、館内会議室で開催された。
島根県立古代出雲歴史博物館交流・普及課長である角田徳幸氏を招いて、研究会メンバー向けの報告をしていただいた。
角田氏は、「中世の鉄生産と近世たたら吹製鉄の成立」というテーマの報告をおこない、近世のたたら吹製鉄が成立する以前の、 古代~中世の中国地方(播磨を含む)の鉄生産の展開と特質を、考古学の立場から展望した。

討論では、①古代の吉備平野部での鉄生産がその後廃れるのは、素材が鉄鉱石(朝鮮半島で有力だった)から砂鉄に変化することに 要因が求められるのではないか、②中世以降の製鉄技術や「大鍛治」(精錬鍛冶)の技術移転のあり方を、 文献資料にもとづき考察することは困難だが、権力介在的なものより、 職人間の交流を通じて行われていた可能性が強いのではないか、③中世播磨の物流と鍛冶技術をみる上で、 宍粟市一宮町のいぎす生栖遺跡の位置づけが重要になってくること、④播磨でのたたら製鉄を分析する際には、 既存の考古データや基礎的な記録をまず見直すことが不可欠であり、 たたら製鉄の全国的な展開の中で播磨の特色を探ることが肝要ではないか、などの意見が出された。

これを受けた午後の班会議では、来年度の班の研究基本方針を、「宍粟市と共同して、考古部門と文献調査部門の基礎的研究をすすめる」とすることに決め、また考古学と文献史料の双方の調査研究課題について議論した。
参加者は13名だった。

(文責・坂江渉)