1. 期間:平成28年3月19日 土曜日
  2. 参加者
    ・室長と研究コーディネーターのほか、たたら製鉄研究班3名、および文化財課の山下副課長の6名が参加。
    佐用町教育委員会の藤木透氏の案内のもと現地等を巡る。
  3. 調査概要
    ▼たたら製鉄研究班が、中世~近世の西播磨の製鉄の歴史を深める目的で、佐用町内の古代の製鉄関連遺跡の巡見調査、および現地研究会をおこなった。
    午前中にJR佐用駅前に集合のあと、佐用町教育委員会の文化財調査室に向かい、まず現地研究会を実施した。
  1. 現地研究会(佐用町教育委員会文化財調査室にて)
    □報告:村上泰樹氏(ひょうご歴史研究室研究員)
    「「讃用郡駅家里鉄十連」を考える」
    ・奈良県の大官大寺跡から出土した「讃用郡駅家里鉄十連」という木簡をめぐり、各国風土記の鉄関連の伝承、関連する出土文字資料を用いながら、古代の讃容郡内における製鉄のあり方を考える報告をおこなった。
    鉄「十連」が、現在でいうと約240キロにあたること、古代の讃容郡では、滋賀県の木瓜原遺跡のような、大規模な製鉄工房的な施設が存在したと推定できることなどを指摘した。
    □討論
    ・古代の製鉄は、農民が農業の片手間(農閑期)によって出来るものではなく、かなりの技術水準が必要なこと、製鉄に必要な燃料(木炭)はどのような種類の材木が利用されていたのか、などの質問が出され、また今後、『播磨国風土記』の中川里条の「霊験伝承」、苫編部氏の動向、霊験を入手した先の「河内のトノギ」との関連などについて分析すべきではないかなどの意見が出された。
  2. 佐用町内の製鉄関連遺跡の現地調査
    □昼食の後、共同研究員の藤木透氏の案内のもと、
    ・村上報告に関連する風土記の「中川里」比定地付近の「新宿廃寺」
    ~佐用町の「えい永だに谷遺跡」~山平B遺跡~本位田高田遺跡~
    佐用都比売神社(式内社)などを巡見した。
    □遺跡調査をおこなうことにより、古代の製鉄が、各丘陵のV字谷の渓谷を人為的に平らげ、そこを通る風と、近くの水を利用しておこなわれる、という共通項的な要素を実感することができた。
研究会(文化財調査室にて)
たたら製鉄の跡地、永谷遺跡

(文責・坂江渉)