風土記5ヶ国サミットの様子

ひょうご歴史研究室が共催する、『播磨国風土記』編さん1300年記念シンポジウム「風土記5ヶ国サミット 風土記の神話を考える」が、加西市健康福祉会館で開かれた。
本企画は、兵庫県歴史文化遺産活用活性化実行委員会(事務局は兵庫県教育委員会文化財課)が、これまで4年間、取り組んできた『播磨国風土記』の調査研究の成果を総集約する目的でおこなわれた。

播磨国のほか、常陸・出雲・豊後・肥前国の、合わせて4ヶ国の風土記研究者も集まり、それぞれの風土記の魅力や特徴の報告のほか、古代の神話の意味について話し合った。

シンポジウムでは、関和彦氏(東京都八王子市史編さん委員)が、「5つの風土記の魅力」と題する記念講演をおこない、独自の視点にもとづき、それぞれの風土記の個性について、播磨=「岩」、常陸=「水」、豊後=「木」、肥前=「祭」、出雲=「神」という特徴付けをおこなった。

その後、森田喜久男氏(淑徳大学人文学部教授)が常陸国、平石充氏(島根県古代文化センター専門研究員)が出雲国、坂江渉(ひょうご歴史研究室研究コーディネーター)が播磨国、西別府元日氏(広島大学大学院文学研究科教授)が豊後国、木本雅康氏(長崎外国語大学外国語学部教授)が肥前国、の順で各国風土記の書誌的特徴や興味深い神話を紹介した。

後半のシンポジウムでは、古市晃氏(神戸大学大学院人文学研究科准教授)と高橋明裕氏(立命館大学文学部非常勤講師)を司会コーディネーターとして、共同討議をおこない、①古代神話は口承儀礼で語られていたものを1次資料とし、本来、地域生活と密接な関わりをもつものであったこと、②それが『古事記』『日本書紀』の神話とは大きく異なる点であること、③それぞれの風土記を、今後も、大切にすべき地域遺産として保全・活用すべきであること、④5つの国の風土記に関連する関係機関や研究者が、引き続き緩やかな連携関係を保ち、今後も共同研究をつづけていくべきこと、などが話し合われた。

当日の参加者は約300名だった。
今回のシンポジウムの中身については、今後、ひょうご歴史研究室が編集する「研究紀要」などの誌上において、何らかの形で反映される予定である。なお会場では、シンポジウムに先立ち、狂言師の野村萬斎氏が監修した新作狂言「根日女」が、市内の小学生たちによって演じられて、好評を博した。