研究員のブログ
2018年2月2日
平成29年度研究成果発表フォーラム「播磨のたたら製鉄研究の新展開」の結果
2018年2月2日(土曜日) 13:00~16:30
平成29年度研究成果発表フォーラム「播磨のたたら製鉄研究の新展開」の結果
ひょうご歴史研究室が、本年度重点的に研究を進めた、たたら製鉄研究班の成果発表会を、平成30年3月4日(日)午後、宍粟市と宍粟市教育委員会の後援を得て、当館ホールで開催した。
まず会の冒頭、(社)日本鉄鋼協会企画、(株)岩波映画製作所製作の短編映画、「和鋼(わこう)風土記」(1970年、28分)を上映し、貴重な映像資料を通じて、参加者がたたら製鉄を具体的に理解できるようつとめた。
それに引き続き、笠井今日子共同研究員(西宮市立郷土資料館)が、「古文書からみた近世播磨のたたら製鉄」と題する講演を、田路正幸共同研究員(宍粟市教育委員会)が、「考古学からみた宍粟の製鉄遺跡」というテーマの講演をおこなった。
休憩の後、大槻守客員研究員(香寺町史研究室)と村上泰樹共同研究員(兵庫県まちづくり技術センター)を司会コーディネーターとするパネルディスカッションを、約1時間おこなった。
パネルディスカッション
パネルディスカッションは、参加者からの質問も交えて進められ、出雲たたら製鉄と比較した播磨たたら製鉄の特質、宍粟郡内で産出された鉄の物流ルート、たたら製鉄の現場で働く人たちの雇用形態の問題などが議論された。
このうち出雲と播磨の操業形態の違いについて笠井共同研究員は、「出雲などの山陰側では、鉄山師が自分の持山を開発し、拠点的たたら場を中心にして、長期的に操業するのが大きな特色。それに対し播磨の個性は、請負業者が公有地を借り、各地を移動しながら操業する点に求められる」などと述べた。
会場は200名以上の参加者で溢れ、回収したアンケート用紙には、「古文書と発掘成果という全く別のアプローチからの2つの講演を聴けて、たたら製鉄に対する興味が増した」「播磨の奥地にも、「たたら」という自慢できる歴史遺産があることに気づいた」「出雲との比較を通じての播磨たたらの話が非常に良かった」「記録映画をみて、たたら製鉄の工程がよく分かった。話だけでは抜け落ちる点がフォローされていた。炉を作る様子、炉の形、人びとの動きを視覚的に確認でき、具体的な形で理解できた」などの感想が寄せられた。
(文責・坂江渉)