研究員のブログ
2021年12月8日
『『播磨国風土記』の古代史』の刊行
兵庫県立歴史博物館ひょうご歴史研究室(坂江渉監修)編の『『播磨国風土記』の古代史』という本が、令和3年(2021)11月、神戸新聞総合出版センターから刊行されました。
平成27年(2015)4月、兵庫県立歴史博物館に開設されたひょうご歴史研究室の『播磨国風土記』研究班では、文献史学と考古学のメンバーが一緒になって、『風土記』研究を続けてきました。本書はそうした共同研究の成果を、県民向けに公表した論文集です。
執筆者はひょうご歴史研究室の研究員のほか、共同研究機関の兵庫県立考古博物館、連携する島根県古代文化センターと淡路島日本遺産委員会のメンバー、そして長く地域史研究をすすめてきた仲間など、17名におよぶ多彩な顔ぶれになっています。
本書に収めた38篇の論考は、すべて読み切りの形で、どこからでも読めるスタイルになっています。皆さま方には、もっとも関心のあるテーマから入り、本書全体をお読みください。それを通じて播磨地域への理解と親しみが深まるとともに、各地で『風土記』を活かしたまちづくりがすすんでいけば幸いと考えます。
本書の章立て・論考名・執筆者は、以下のとおりです。
第1章 播磨と倭王権
①竜山石とヤマト王権(和田晴吾)
②国造とミヤケ(古市晃)
③伊和大神とは何か(古市晃)
④伊和大神の「国譲り」(大平茂)
⑤『播磨国風土記』にみえる応神天皇の巡幸説話(中村聡)
⑥継体天皇と播磨(古市晃)
⑦地名の由来に託された服属の証し(坂江渉)
⑧荒ぶる神の鎮祭伝承(坂江渉)
⑨市川流域の軍事集団、播磨佐伯氏(高橋明裕)
⑩『播磨国風土記』からみる大宰・総領制(中村聡)
第2章 播磨の道と地域間交流
①播磨の道と「見せる」古墳(中村弘)
②印南野の歴史的環境と吉備(中村弘)
③「大田」地名から古代の開発を考える(平石充)
④志深ミヤケと湯山街道(坂江渉)
⑤「舟引原」伝承と荒ぶる神(森内秀造)
⑥東播と西摂(高橋明裕)
⑦播磨国の古代官道と駅家(山下史朗)
第3章 大阪湾岸と淡路島の海人
①淡路島の海人と弥生時代の鉄器生産(伊藤宏幸)
②淤宇宿禰伝承と淡路の海人(池淵俊一)
③阿波のワナサとミマツヒコ(古市晃)
④国生み神話と島造り神話(坂江渉)
⑤明石海峡付近の海人の生業と習俗(坂江渉)
⑥「海の民」椎根津彦と倭直(井上勝博)
第4章 地域生活と播磨の神祭り
①厳しい生活環境と古代の食糧事情(坂江渉)
②古代の婚姻・生殖と村の祭祀共同体(坂江渉)
③女陰信仰と風穴の祭り(坂江渉)
④豊作と多産を祈る風穴の祭り(坂江渉)
⑤播磨地域の祭祀遺跡(大平茂)
第5章 播磨の古代寺院と仏教
①恵便(神戸佳文)
②紀伊の大伴氏と鶴林寺(高橋明裕)
③大河川の渡し場と椅寺(坂江渉)
④辻井廃寺(大谷輝彦)
第6章 播磨の古代と資料・地誌
①『播磨国風土記』の資料的価値(坂江渉)
②オケ・ヲケ物語の実態(古市晃)
③石板が語る古代播磨の秦氏(古市晃)
④幕末以降の『播磨国風土記』の写本ネットワーク(垣内章)
⑤『播磨国風土記』研究の先駆け(垣内章)
⑥江戸の古代史(藪田貫)
本書は書店にてお買い求めください。
兵庫県立歴史博物館ひょうご歴史研究室編
坂江渉監修
『『播磨国風土記』の古代史』
神戸新聞総合出版センター刊
ISBN978-4-343-01131-2
税込み価格 1,980円