特別展 「いくさ物語の絵画―瀬戸内の名品と収蔵コレクション―」 開催期間: 2025年04月26日(土) 〜 2025年06月15日(日)

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華やかな装束の武者たちが力を尽くして戦う様を描いた合戦図。現在伝わる合戦図の優品は、江戸時代前期に制作されたものが多く、また軍記物などの文学作品や先行する類似作品を踏まえて描かれていることが知られています。
この展覧会では、源平合戦などの舞台となった瀬戸内海沿岸各地に収蔵される名品を集め、館蔵・寄託品とともに、屏風や絵巻などに描かれた近世の合戦図を展示します。源平合戦から太平記・戦国合戦まで、中世のいくさ物語の名場面を近世の絵画でご鑑賞いただきながら、文学作品を補助線として絵画作品を読み解く楽しみや、江戸時代の人々の歴史の受け止め方の一端をご紹介します。歴史・美術・文学の三分野の交点にある作品の魅力をお楽しみください。
展覧会のみどころ
瀬戸内海沿岸地域で所蔵される合戦図の優品を展示します
今回は、広島・愛媛・岡山・香川など、瀬戸内海沿岸各地で所蔵されている優れた作品をお借りしてご紹介します。兵庫や大阪などを含めた瀬戸内は、展示作品に描かれた源平合戦などの舞台となった地域です。
お借りする作品はどれも名品揃いです。『保元物語』が語る源為朝(ためとも)の大活躍を画面全体にちりばめる保元合戦図屏風(岡山県立美術館蔵、後期に展示)、『平家物語』が語る一の谷・屋島合戦のエピソードを詳細に描き出す源平合戦図屏風(愛媛・今治市河野美術館蔵、後期に展示)や、平家物語絵の名品として著名な平家物語絵巻(岡山・林原美術館蔵、前・後期1巻ずつ展示)など、江戸時代前期(17世紀)の絵師が丹念に描いた優品の数々をご堪能ください。
当館収蔵品も良作です
当館の収蔵品(館蔵品・寄託品)からは、源頼朝挙兵直後の三浦半島(神奈川県)での戦いを描いた珍しい屏風(全期間展示)や、一の谷合戦を描く個性的な屏風(全期間展示)などを展示します。また、楠木正成と子息正行(まさつら)との別れの場面を描く屏風(全期間展示)は、江戸幕府が18世紀初頭に朝鮮国王へ贈った屏風との関連性が指摘されています。いずれも意義ある良作です。
また、保元の乱を画題とする力作(※寄贈手続中。3月末までに完了予定、前期に展示)など、これまで十分には展示公開の機会に恵まれていなかった作品も展示します。
大画面に描きこまれた物語をお楽しみください
多くの合戦図は、『平家物語』や『太平記』などの軍記物語によって伝えられてきた合戦のエピソードを絵画化しています。画面を丹念に見ていくことで、描かれたエピソードを見つける楽しみも味わえます。
軍記物語の叙述は必ずしも史実を示すものではありませんが、歴史の世界への入り口として古くから親しまれてきました。優れた絵画作品を通して、軍記物語が持つ魅力にも触れていただければ幸いです。
※作品保護のため、会期半ばで大幅な展示替えをします。
前期:4月26日(土)~5月18日(日)
後期:5月20日(火)~6月15日(日)
※出品件数:38件(予定)
開催概要
会期 | 令和7年(2025)4月26日(土)~6月15日(日) 44日間 |
開館時間 | 10:00~17:00(入館は16:30まで) |
休館日 | 月曜日 ※ただし5月5日(月・祝)は開館、5月7日(水)が休館 |
会場 | 兵庫県立歴史博物館 特別展示室・コレクションギャラリー 〒670-0012 兵庫県姫路市本町68 電話:079-288-9011 FAX:079-288-9013 |
主催 | 兵庫県立歴史博物館、神戸新聞社 |
後援 | 兵庫県、兵庫県教育委員会、NHK神戸放送局、サンテレビジョン、ラジオ関西 |
広報協力 | 山陽電気鉄道株式会社、神姫バス株式会社 |
協賛 | 公益財団法人日本教育公務員弘済会兵庫支部 |
大人 | 1200円(950円) |
大学生 | 950円(750円) |
70歳以上 | 600円(450円) |
障がい者 | 一般:300円(200円) 大学生:200円(150円) |
高校生以下 | 無料(無料) |
備考 | ※( )内は20人以上の団体料金 ※障がい者1人につき、介護者1人は無料 |
前売券 一般(950円)を下記のとおり販売します
販売期間:4月25日(金)まで
- 兵庫県立歴史博物館
- 姫路市立美術館友の会
- 中井三成堂
- (公財)姫路市中小企業共済センター
- 姫路市文化国際交流財団(姫路キャスパホール)
展覧会の構成とおもな展示資料
Ⅰ. 保元・平治の乱合戦図
平安末期(12世紀)の京都で戦われた保元の乱(1156年)と平治の乱(1159年)は、その後鎌倉幕府から江戸幕府まで続く武家政権の時代への端緒となる事件でした。
この乱を描く絵画作品はさほど多くは知られていません。しかし、中世絵画では鎌倉時代後期(13世紀後半ごろ)の平治物語絵詞(へいじものがたりえことば)があり、近世絵画では江戸時代前期(17世紀)に制作された屏風の優品などが国内外に所蔵されています。
本章では、大画面に技巧をこらして保元の乱での武者たちの奮闘を描く力作(当館へ寄贈手続中、前期に展示、写真上掲)や、同じ乱の中での鎮西八郎為朝(ちんぜいはちろうためとも)の活躍を活写する屏風(岡山県立美術館蔵、後期に展示)、『保元物語』・『平治物語』を絵画化した貴重な絵巻(広島・海の見える杜美術館蔵、前・後期で場面替え)などをご紹介します。

江戸時代 兵庫県立歴史博物館蔵
(※3月末までに寄贈手続き完了予定)
展示期間:4月26日(土)~5月18日(日)
Ⅱ. 源平合戦図
源平合戦図屏風とは、主として『平家物語』に由来する戦いのエピソードを大画面に描く作品群です。
全国各地に江戸時代前期(17世紀)の優れた作品が数多く伝来しており、主に大名層などの武家社会の需要に応えて制作されていったものと考えられています。
本章では、源頼朝が挙兵した直後の三浦半島(神奈川県)での合戦を取り上げた珍しい作例(当館蔵、全期間展示)、大画面の中に多数のエピソードをちりばめながら一の谷(神戸市)や屋島(香川県)の戦いを描く作品(愛媛・今治市河野美術館蔵、後期に展示、など)、そして一の谷での熊谷直実(くまがいなおざね)と平敦盛(たいらのあつもり)の哀話などを大画面にクローズアップして描く力作(広島・海の見える杜美術館蔵、前期に展示、写真上掲、など)、名品として広く知られる平家物語絵巻(岡山・林原美術館蔵、前期・後期1巻ずつ展示)など、江戸時代前期における源平合戦図の多様な広がりをご紹介します。

江戸時代 広島・海の見える杜美術館蔵
※展示期間:4月26日(土)~5月18日(日)
Ⅲ. 太平記・戦国合戦図
南北朝の内乱(14世紀)を語る『太平記』に由来する絵画作品は、源平合戦図や戦国合戦図と比べると少数ですが、楠木正成を描く優品などが知られています。
戦国合戦図には、先祖の武功の顕彰など、江戸時代の武家たちの過去の戦乱へ関心のあり方が反映されています。本展で展示する川中島合戦図屏風(和歌山県立博物館蔵、後期に展示、写真右掲)は、その制作に軍学者が関与していたことが明らかにされており、江戸時代前期(17世紀)に合戦図が盛んに制作された背景を考える上で重要な作品の一つです。
本章では、川中島合戦図屏風のほか、楠木正成の最期の舞台となった湊川の戦い(神戸市)を描く力作(個人蔵、和歌山県立博物館寄託、前期に展示)や、播磨の戦国時代に終止符を打つ戦いとなった三木合戦を描く掛軸画の模本(当館蔵、全期間展示)などをご紹介します。

江戸時代 和歌山県立博物館蔵
※展示期間:5月20日(火)~6月15日(日)
Ⅳ. 合戦図の諸相
源平合戦図屏風の中には、上級武家の需要に応え得るものとは画風の異なるものもあり、その中には市井の人々が享受した作品群もあると考えられます。江戸時代後期(19世紀)ごろには、錦絵(にしきえ)の武者絵の影響がうかがえるものも登場します。
本章では、そうした合戦図の広がりを、合戦図絵巻の名品の模本類、参考資料としての武具甲冑類などとともにご紹介します(本章後半部は1階コレクションギャラリーで展示)。