地球温暖化の現われか、桜の開花も、筍の成長も、ツツジが咲くのも、いつもより早い気がします。このまま初夏に向かっていくのでしょうか?

 そんな春ですが、わたしにとっては歴博館長になって10年目の春です。今年度いっぱいが任期ですので、館長として最後の一年になります。いろいろと思い返すのは任期が終わってからにしたいと思いますが、この9年間、よく勤めた、と自分ながら褒めたい思いがあります。と同時に、最後の一年、故障することなく勤め上げられるように誠心誠意、努力したい、との思いも全身に詰まっています。皆様には、よろしくお願いいたします。

 さて10年目の春は、大規模改修工事を終え、リニューアルオープンする春、そして開館40周年の記念すべき春でもあります。4月8日(土)に特別展HISTORY OF MUSEUMがオープンしましたが、その前日7日(金)には、齋藤元彦兵庫県知事・清元秀泰姫路市長、ならびに県・市双方の教育長らが出席され、記念式典を催行することができました。知事からは式辞、市町からは来賓を代表して祝辞がありました。それに応えてわたしは謝辞を述べさせてもらいましたが、それは、参列者への謝意、工事関係者への謝意であるとともに、40年の歩みを支えていただいた方々への謝意でもありました。

 そうした支援を得て、観覧者数のべ四百数十万人、コレクション数30万点余、という実績を持つ博物館に成長することができたのです。

式典後のテープカット

 館長として9年間、在籍した身としては、この度のリニューアルを通じて、丹下建築を蘇らせることができたと理解しています。

 当館が、世界的な建築家丹下健三氏の設計に依るものであることはよく知られていますが、その設計プランにもっとも忠実な利用形態が、この度のリニューアルで実現したと考えるからです。そこにはデジタル機能の飛躍的な向上によって、壁面の多い歴博の空間が無駄なく利活用されるようになった、という背景があります。その典型は入口のロビーです。ロビーを塞いでいた塔のような映像案内装置が撤去されることで、ロビーの中央で、広々とした場所で来館者を迎え入れることが可能となったのです。

 そして渡り廊下の壁面は動画のスクリーンとなり、「よりみちレキハク」が毎日、上映され、来館者の歴博に対する理解を深めています。

ロビー風景

 それほどに丹下健三氏は、国宝で世界遺産でもある姫路城に隣接して立つこの博物館に、城郭のイメージを織り込みたかったのだろうと思います。その想いの深さは、この度の特別展HISTORY OF MUSEUMの冒頭に展示された模型に示されています。60メートル四方で周囲に堀のある当初のプランから改変されること6度、試行錯誤を経て、現在の博物館に落ち着いた様子が窺えるのです。

丹下健三・都市・建築設計研究所が作成した当館の基本設計案の模型

 この模型は、今回、初めて公開されるものですが、お城を含めた平面模型とならんで、ぜひともご覧いただきたいと思います。

 特別展HISTORY OF MUSEUMへのご来館をお待ちしております。