2月から3月は、卒業式が続きます。とりわけ小学校の卒業式は、格別なものがあります。今春は、久しぶりにマスクなしの式典になりそうですから、喜びも一入でしょう。
 わたしにもそんな時があり、アルバムの中に写真として収められていますが、その小学校が創立150年を迎えたそうです。「そうです」と伝聞体で書くのは、郷里を長く離れてしまっていることから小学校の情報を直接、得ることがなかったからですが、ひとりの後輩との会話から、それを知ったのです。
 その後輩とは、前大阪城天守閣館長北川央さん。昨年3月末に退職され、現在は九度山・真田ミュージアム名誉館長として活躍されています。わたし自身、そのことをまったく知らなかったのですが、彼の叔母さんとわたしが小学校の同級だったのです。その彼女の姿も名前も、記憶にしっかりと残っていますが、北川氏とは一回り以上も年齢が違い、中学以後、大学までまったく異なった経路を辿っていただけに、その事実を伝えられ驚いたものです。というよりもわたしを小学校の先輩と認識し、周囲に語っていてくれたことが、わたしには嬉しいことでした。
 歴史研究者としても、博物館長としても、小学校のよき後輩を持っていることを大いに自慢したいと思います。

 創立150年を迎えた母校の現在の姿を見る機会は得ていませんが、各地で、創立150年を迎えた小学校を祝う気運が高まっているのを感じています。明治5年(1872)8月3日に「学制」が発布されたことは歴史年表の語るところですが、翌年に開校されるとすれば、令和4年(2022)はたしかに150年になります。
 小学校創立150年の気運の高まりにはいま一つ、近代建築物としての小学校校舎への関心の高まりがあるのではないでしょうか?
 その一つとして、兵庫県内の小学校として初の重要文化財に指定された西脇市立西脇小学校があります。同校も明治6年開校で150年を迎えますが、指定された校舎は昭和9~12年建立の木造二階建てのもので、驚くことに現役です。令和3年6月現地を案内していただきましたが、洋風の清楚な建物に大いに感激しました。今年の10月29日に、指定に尽力された神戸大学名誉教授足立裕司氏による講演が当館で行われます。

西脇市立西脇小学校

 一方、昨年5月、資料調査の途次に、明治末年に建築された木造の小学校を訪れる機会がありました。東西の校舎は明治33年(1900)、本館は42年の建築で、平成24年(2012)まで「現役最古の木造校舎」として使われたのですが、生徒数の減少にともない閉校となりました。しかし岡山県の重要文化財として指定されていたことから、同27年から解体・整備がなされ、昨年4月、旧吹屋小学校として公開されたのです。

 国内屈指のベンガラと銅の生産で栄えた備中吹屋は、町全体が石州瓦とベンガラ壁の家並み(伝統的建造物群保存地区)として知られています。わたしの訪問もそれが目的でしたが、思いがけず、地区の児童たちが112年通い続けた小学校が、地域の歴史文化を発信する拠点として活用される場に立ち会ったのです。

 ガイダンス施設では最後の児童たちを送り出した時の映像が流され、教室や廊下には、子どもたちの作品が展示され、学校資料館の役割を果たしていました。