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甲冑の種類と変遷

当世具足とうせいぐそく

戦国時代も末期になると、「当世具足(とうせいぐそく)」と呼ばれる新しい形式の甲冑が盛んに用いられるようになりました。当世具足には、前代までの胴丸の系譜を引く特徴がみられますが、同時に戦国期以降の戦闘で主流となっていった槍武者の集団戦や鉄砲戦に対応するために、より頑丈かつ軽快に動けるような工夫が凝らされています。

まず、胴は前代までの小札を綴り合わせるものも残る一方で、煉革(ねりがわ)や鉄の一枚板である板札(いたざね)を上下方向につなぎ合わせたものが多くなりました。ただし、板札は小札を綴り合わせたものと異なり柔軟に屈曲しませんので、そのままでは胴の着脱が困難となります。そのため、胴の左脇などに蝶番(ちょうつがい)を設けて開閉自在にするなどの工夫が加えられました。

当世具足の胴は、この蝶番で繋がれた胴部品の数が分類する際の一つの基準となっており、たとえば、胴の前面と背面を一箇所の蝶番で繋ぐものを二枚胴といいます。このほか、蝶番で繋ぐ箇所をさらに増やして、五枚胴、六枚胴としたものもみられます。いずれの形式の胴でも、体を入れるための引合部は前代の胴丸のように右脇に開けられるものが一般的でした。

草摺は7間のものが多くみられますが、中には13間に分かれるものなど、数多くのバリエーションがあります。また、揺糸(ゆるぎのいと)と呼ばれる胴と草摺を繋ぐ糸が長いものが一般化していきました。これは、刀を差す上帯(うわおび)を巻いても、草摺が自由に動くようにする工夫と考えられています。さらに、ほとんどの遺品に草摺の下に着用して大腿部を防御する佩楯(はいだて)や、顔面から喉元までを覆う垂(たれ)付の面頬(めんぽう)が付属しており、より防御力を高めています。

このように、当世具足は戦場での防御力、機動力を高めるための工夫が随所に凝らされているのですが、同時にデザインにも工夫がみられます。とくに上級武者が着用したものには独自の意匠を凝らしたものが多く、後述する奇抜な形態の変わり兜とともに、戦場で自らの存在を誇示することをねらった具足が数多く制作されました。

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