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刀を見るための基礎知識

太刀と刀

平安時代以降の日本の刀剣には、大きく分けて「太刀(たち)」と「刀(かたな)」の区別があります。これは端的には体へのつけ方の違いによって区別されています。太刀は、刃を下にして腰帯にぶら下げるようにつけるもので、これを「佩く(はく)」といいます。太刀は平安時代後期ごろに形態が確立したもので、それ以来の古式の日本刀となります。

一方、刀の方は、刃を上にして腰帯に鞘(さや)を差し込むというつけ方をします。これを「差す(さす)」といいます。刀のことは打刀(うちがたな)ともいいます。太刀に代わるものとしての刀の使用は室町時代ごろから一般化していき、江戸時代になると通常は刀が用いられ、太刀は儀式用になっていきました。

ただし、こうしたつけ方の違いは制作当初からの鞘などの「拵え(こしらえ)」と呼ばれる外装部が残っていれば見分けがつきやすいのですが、本来の拵えが残っている事例はかなりまれです。そこで主には、普段は柄(つか)の中に入れられている刀身の「茎(なかご)」と呼ばれる部分に刻まれた銘の位置に注目することになります。

一般的に、太刀の場合は刃を下にして左腰に佩きますので、刃を下に向けたときの茎の左側が体の外側に向くことになります。この体の外側に向く方を「表(おもて)」といい、佩いた状態での表を「佩表(はきおもて)」、と呼びます。そして、刀工が銘を入れる場合、一般的には茎の「表」に入れるという原則がありましたので、「佩表」に刀工の名が刻まれていれば、これを太刀と判断する、という目安があるのです。逆に、刃を上にしたときの茎の左側を「差表(さしおもて)」といい、こちらに刀工の銘があれば刀と判断する、ということになります。

ただし、この「佩表」、「差表」に刀工銘が入るという原則には例外がかなりありますので、あくまでも目安ということになります。

▲ 太刀銘 刃を下に向けたときの体の左側
▲ 刀銘 刃を上に向けたときの体の左側

また、これも絶対的な違いではありませんが、太刀と刀には、相対的な長さや反りの違いもあります。一般的には太刀の方が長く、刀の方がやや短く作られました。ただし、現代の分類基準では、太刀・刀とも刃の部分の長さが2尺(約60cm)以上のものとなっており、長さだけでは違いは明確になりません。これには、現存する日本刀は多くのものが伝来過程で扱いやすいように長さを短くされている(これを「磨り上げ〔すりあげ〕」といいます)ことも影響しています。太刀と刀の区別は、こうした銘の位置や長さを目安としつつ、全体の形状や、いつごろのものかという年代観を総合的に判断してなされています。

また、刀よりも更に短く作られているものは、太刀や刀に対する二本目の刀剣として差すためのものなので、「脇差(わきざし)」と呼ぶのが一般的です。現代の分類基準では、脇差は刃部の長さが1尺(約30cm)以上2尺(60cm)未満のものとされており、それより短いものは「短刀」として区別されています。逆に、長い方ではおおむね刃長3尺(約90cm)以上の長大なものを「大太刀(おおだち)」と呼んでいます。

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