特別展「首里城と琉球王国」では、琉球・沖縄に関する館蔵資料をいくつか展示しました。
 そのなかでも目を引くのが喜田文庫です。これは喜田幾久夫氏(1903~2000)が収集された1万点にもおよぶコレクションで、書画や古文書を中心としたものですが、そのなかに琉球関係資料が含まれていたのです。
 2009年に当館で開催した特別展「国宝沖縄・琉球王国の美」でもその一部をお披露目していますが、諸般の事情から、展覧会図録に資料を掲載することはできなかったと聞いています。

 例えば、2009年に出陳した「野国総官家系譜書」は、今回の特別展を準備する段階で様々な家の家譜仕次や、近代の事由書が綴られていることが分かり、それを踏まえて「家譜仕次等綴」とタイトルを改めた上で今回も展示をすることにしました。

 そのほか、2009年段階では展示をしなかった資料や、その後の整理過程で新たに見つかった資料についても、できるだけ展示構成に組み込むように工夫しました。                    

             

 これらの資料については、いずれも展示図録に写真を掲載の上、若干の解説を付しましたが、これまで琉球史を専門として研究してきたわけではなかったため、数行の解説を書くのも一苦労。そのため、これらの資料が本質的にどのような歴史的価値をもっているのかを、来館された皆様に対して、十分にお伝えできなかったかもしれません。しかし、今回の特別展で館蔵品の琉球・沖縄関係資料をご紹介できなければ、これらの資料の存在を公開する機会を失うことになってしまいます。しかも、今回の特別展は兵庫・沖縄友愛提携50周年を記念するものです。沖縄に関係する館蔵資料の公開を通じて、両県がさらなる交流を深めることができれば、開催の趣旨にも合致します。また、公開によって多くの方が目にしていただくなかで、貴重な情報をお寄せいただけることもあります。これらを踏まえて、館蔵資料を展示することを決めました。

 実際、会期中に様々な方から、多くの情報をお寄せいただきました。例えば、今回、展覧会をご覧いただきました沖縄県立博物館・美術館の里井洋一館長からは、出品資料の「龍田紡績沖縄女子挺身隊」に関して貴重な情報をいただきました。いきさつの詳細については沖縄県立博物館・美術館の「館長あいさつ」をご覧いただきたいと思いますが、そこで里井館長がいうように、資料の公開を通じて兵庫県と沖縄県の「知の交流」を深めることができ、こうした情報をもとにして、会場内に「沖縄女子勤労挺身隊」の証言を閲覧できるコーナーを設置することができました。

 特別展は会期を終えてしまいましたが、展覧会の内容は「図録」という形でご覧いただけます。まだ残部がございますので、ぜひお買い求めください。

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