学芸員コラム
2022年9月16日
第143回 “ひょうご五国”歴史文化キャラバンin赤穂での取り組みについて
当館が大規模改修工事のため休館している間、県内各地を巡回する展覧会“ひょうご五国”歴史文化キャラバン。県内5か所目となる今回は、西播磨の赤穂市立歴史博物館にて開催しています。
赤穂会場では、各地で人気を博している「神戸人形」をはじめとした県内各地の会場を巡回する資料に加え、「製塩図解」をはじめとした赤穂ないし西播磨にゆかりのあるものを展示しています。
じつは、今回の展覧会が、私が主担当として携わる初めてのものとなります。加えて、会場は日常的に見慣れていない他館の展示室。事前の準備や展覧会直前の陳列作業は、経験の浅い私にとって困難ばかりでしたが、会場館のみなさまや当館スタッフの助けを借りながら、なんとか無事に開催することができました。「言うは易し行うは難し」という言葉が骨身に染みる思いがしました。
ところで、赤穂会場を担当するにあたって、自身に課題として設定していたことが2つあります。その一つは巡回先となる地域と交流をもつこと。会場となる赤穂市立歴史博物館と情報交換を行うことはもちろんのことですが、さらに開催地にお住まいの方々と関わる機会があればより良いなあと考えていました。そんな時、学校の児童生徒に来館していただく機会としたらどうかという意見が館内から出され、地域住民のなかでも、とりわけ小中学校の児童生徒をターゲットにすることとしました。秋は校外学習のシーズンということもあり、学校団体の利用を念頭に置いて、小中学生向けのワークシートを作成する運びとなりました。ワークシートの作成には、当館の指導主事と相談しながら内容を詰めていきました。その過程で昨年度から当館と連携協定を結んでいた兵庫教育大学の山内敏男先生と意見交換をすることで、質を上げていくことができました。
内容は小学生には少し難しいかもしれませんが、あえてそのようにしたのは、保護者や先生方と交流しながら答えを導き出してほしいという思いからです。
本展覧会の課題設定としていたこと。その2つめは改修工事後に再開館した際の展示方法を考えることです。歴史系の展示ではどうしても説明パネルが多くなりがちですが、担当者としては展示されている資料をじっくりみてほしいと考えています。そこで考えたのが、音声ガイドの導入と、QRコードによる補助解説の設置でした。前者については主にライトユーザー向けの内容とし、ガイド音声の吹き込みは県立赤穂高等学校の生徒会のみなさんにご協力いただくことができました。
高校生は当館と接する機会の少ない年齢層の方々の一つであるというデータがあるため、そうした年齢層に音声の吹き込みを通じて地域の歴史に触れていただける、さらに当館ともつながる機会が生まれるという点で一挙両得でした。ご協力いただいた高校生のみなさんについては勉強に部活に忙しいなかで、真剣に取り組んでいただきました。こうした経験は「ひょうごの未来へのかけはしとなる博物館」を使命とする当館にとって、手応えのある取り組みとなったと考えています。
次にQRコードによる補助解説の設置について。これは、主に展示品をより深く知りたい方向けに作成したものです。すべての展示品について作成することはできませんでしたが、観覧の際、気になった展示品があれば、ぜひとも傍らのQRコードを読み込んでみてください。内容は当館HPからもご確認いただけます。
巡回展“ひょうご五国”歴史文化キャラバンin赤穂の展示は、思いのほか学校団体と関わることが多くなりました。こうした経験を再開館後の館の活動に生かしていきたいと考えています。