特別展 特別展「ひょうご鉄ものがたり」 開催期間: 2024年10月05日(土) 〜 2024年11月24日(日)

報道関係の方へ
本展に関して、新聞、広報誌、テレビ等にて掲載・放送するにあたり、下記の「記者発表資料」をご覧いただき、「資料請求書」をFAXにてご提出いただきますようをお願いいたします。

明石海峡を眼下に望む淡路島北部で弥生時代に営まれた鉄器づくりのムラ、奈良時代の播磨国風土記に記された古代製鉄の記録、中世の刀剣などに刻まれた西播磨の「宍粟(しそう)」や「千草」の地名、そして江戸時代に営まれた“たたら製鉄”など、歴史をひもとくと、製鉄は兵庫県域と長く関わりを持ち続けてきたことがわかります。明治期に入ると欧米諸国から鋼材の大量輸入や鉄山の国有林化などにより、兵庫のたたら製鉄は他県とくらべて早い時期に終焉を迎えます。その一方で近代以降、臨海部の工業地帯では大規模な製鉄業が始まり、現在では温室効果ガスの排出を抑えるなど自然環境に配慮した鉄づくりへの挑戦が始まっています。

兵庫県立歴史博物館では、平成27年(2015)に設置されたひょうご歴史研究室を中心にして、「播磨のたたら製鉄」の特質の解明を進めてきました。この展覧会では、その研究成果を活かしながら、兵庫県域での鉄づくりのあゆみについて、さまざまな歴史資料により紹介します。

展覧会のみどころ

弥生時代から現代まで、製鉄に関する歴史を実物資料で展示!

兵庫県域の人々が鉄と出会い、鉄を利用して道具や武器づくりを始めた弥生時代から、国宝に指定された太刀の素材となった鋼を生み出した鎌倉時代、砂鉄を利用して山間部の宍粟で盛んに行われた江戸時代の「たたら製鉄」、そしてCO₂の排出を極限まで削減し高品質の製品を生み出す現代の製鉄。このような兵庫における製鉄の歴史を実物資料により紹介します。

あのアニメでおなじみの「たたら製鉄」の様子を紹介!

有名なアニメのなかで、まるで城のような大たたらで砂鉄を沸かして鉄づくりを行うシーンが描かれていました。たたら製鉄は江戸時代の兵庫県宍粟市の山間部でも盛んに行われており、本展ではその様子について、江戸時代の絵画やたたら場で用いられた道具、古文書などをフル活用して紹介します。

たたら製鉄の記録映画を公開!

『和鋼風土記』(約30分)
昭和44年(1969)に行われた、たたら製鉄の再現実験の映像を、会場入口で上映します。昔の製鉄について具体的なイメージを持って特別展をご覧いただきますと、展示をより深くご理解いただくことができます。どうぞお楽しみに!!

昭和45年(1970)、企画:社団法人日本鉄鋼協会、協賛:社団法人日本鉄鋼連盟・社団法人鋼材俱楽部、製作:岩波映画製作所、脚本・監督:山内登貴夫

鉄道好きの方もみどころあり!

明治以降の、欧米諸国から安価な鉄が大量に輸入されたことが、たたら製鉄を衰退させた一因となりました。大量輸入された鋼材の代表として、さまざまな国から輸入した鉄道レールを展示し、それにより兵庫の鉄道の歩みに触れます。また大正から昭和に活躍した波賀森林鉄道の様子についても写真で紹介します。

開催概要

会期令和6年10月5日(土)~11月24日(日) 開館44日間
開館時間10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日月曜日
※ただし10月14日(月・祝)と11月4日(月・振休)は開館、
10月15日(火)と11月5日(火)は休館
会場兵庫県立歴史博物館 特別展示室
〒670-0012 兵庫県姫路市本町68
電話:079-288-9011  FAX:079-288-9013
主催兵庫県立歴史博物館、神戸新聞社
後援兵庫県、兵庫県教育委員会、淡路市、淡路市教育委員会、宍粟市、宍粟市教育委員会、産業遺産学会、NHK神戸放送局、サンテレビジョン、ラジオ関
協力山陽電気鉄道株式会社、神姫バス株式会社
協賛公益財団法人日本教育公務員弘済会兵庫支部
大人1000円(800円)
大学生700円(550円)
70歳以上500円(400円)
障がい者一般:250円(200円)
大学生:150円(100円)
高校生以下無料(無料)
備考※(  )内は20人以上の団体料金
※障がい者1人につき、介護者1人は無料

前売券(800円)を下記のとおり販売します

販売期間:9月7月(土)から10月4日(金)まで

  • 兵庫県立歴史博物館
  • 姫路市立美術館友の会
  • 中井三成堂
  • (公財)姫路市中小企業共済センター
  • 姫路市文化国際交流財団(姫路キャスパホール)

展覧会の構成とおもな展示資料

第1部 古代以前における鉄とのかかわり

1. おのころ島の鉄器生産

明石海峡を眼下に望む淡路島北部では、今から1800~1900年前の弥生時代後期の鉄器作りを行ったムラの跡、五斗長(ごっさ)垣内(かいと)遺跡が発見されました。この遺跡の工房と考えられる建物跡で出土した多数の鉄器やその未完成品、あるいは鉄器づくりに用いる石製の鍛冶(かじ)道具などから、弥生時代の鉄器づくりの様子を示します。

板状鉄斧(ばんじょうてっぷ) 五斗長垣内(ごっさかいと)遺跡(いせき)出土(しゅつど)
弥生時代後期 淡路市教育委員会蔵
兵庫県指定有形文化財

2. 古代の製鉄の記憶

奈良時代に編纂された『播磨国風土記』には現在の宍粟(しそう)市や佐用(さよう)郡で鉄を産出する記述が認められ、また奈良・平安時代の製鉄遺跡が実際に発掘されるなど、律令期(りつりょうき)にはすでに製鉄が開始されていることが明らかになっています。これらの資料の展示により、古代製鉄の一端に迫ります。

第2部 ハガネ・カタナ・タタラ 

★プロローグ:鍛冶大工の家に伝えられた刀

第2部では、かつて西播磨の宍粟郡で盛んに行われた製鉄、特に江戸時代のたたら製鉄を中心に紹介します。

最初にご覧いただく刀の作者は、宍粟市波賀町域の鉄山の、大鍛冶場の大工をルーツに持つ刀匠です。先祖から伝えられた技能を活かして野鍛冶を営んでいましたが、戦時中に修行をおこない、後に刀匠・源善正となりました。第2部のプロローグとしてその代表作をご覧いただきます。

1. 中世:宍粟のハガネと刀剣

古代より製鉄が行われた宍粟郡を中心とした地域では、鎌倉時代以降も引き続いて製鉄が行われました。中世には宍粟鋼(しそうはがね)が刀剣の素材として一定の評価を得ていたこと、またそれが江戸時代にはさらにブランド化が進められたことを、古文書や銘文が刻まれた刀剣の展示により示します。

(かたな) 銘 摂州大坂住長幸/貞享三年丙寅八月日
以播磨国完粟鋼鉄作之

脇差(わきざし) 銘 右藤原宗栄 元禄七甲戌年二月日/播州完粟千種丸一以英鉄錬鍛作

2. 近世:たたら製鉄の世界

江戸時代の宍粟ではたたら製鉄が盛んに行われました。たたらとは本来、製鉄炉に効率良く風を送るための天秤ふいごのことを言います。天秤ふいごの導入や、それを覆う大型建物・高殿が建設され、この高殿を中心に製鉄に特化した集落「山内」が形成されました。江戸時代の絵画や、たたら場で用いられた道具などの展示により、たたら製鉄の様子を紹介します。

たたら操業(そうぎょう)で使用した道具「炭焚(すみたき)すんどり」
個人蔵(雲南市寄託/鉄の歴史博物館蔵)
島根県指定有形文化財

たたら操業(そうぎょう)で使用した道具「小手(こて)ほど(ほどつき)」
個人蔵(雲南市寄託/鉄の歴史博物館蔵) 
島根県指定有形文化財

先大津阿川村山砂鉄洗取之図 江戸時代末期
東京大学 工学・情報理工学図書館 工3号館図書室蔵

3. 播磨における鉄山の経営

江戸時代の宍粟では幕府直轄領において、商人の請負により鉄山の経営が行われるようになったことが、古文書の調査により明らかにされています。また、近年の調査により、兵庫県立歴史博物館所蔵資料の中にも鉄山経営の実態が記された史料が存在することが明らかになりました。一連の研究成果により解き明かされた、江戸時代における鉄山経営の一幕を垣間見ます。

荒尾鉄山荊石真跡之画(あらおてつざんけいせきしんせきのが) 江戸時代末期
入江正一郎氏蔵

4. 和鉄が生み出したモノ

たたら製鉄では刀剣の素材となる玉鋼(たまはがね)に加えて、銑鉄なども生産されました。これらの多くは大鍛冶場に運ばれて延べ板状の(わり)(てつ)や針金に加工され、これらが各地に運ばれて、様々な日常の生活用具や、その他の生業に用いられた道具が作られました。このような多彩な道具の展示によりたたら製鉄と人々の暮らしとの関わりを示します。

玉鋼(たまはがね)でできた大鋸(おが)
個人蔵

第3部 線路はつづく 

1. 国有林と森林鉄道-たたら製鉄終焉後の産業-

明治期前半に旧宍粟郡内の鉄山の多くが国有林になった後、国有林からの木材輸送のため、旧宍粟郡波賀町では大正期から森林鉄道が建設されました。「林鉄」「トロ道」などと呼び親しまれた森林鉄道は、木材輸送の主役がトラックに移り変った結果、昭和43年(1968) に廃止されました。往年の森林鉄道の様子を当時の写真により披露します。

波賀(はが)森林(しんりん)鉄道(てつどう)
赤西国有林(あかさいこくゆうりん)から貯木場(ちょぼくじょう)へ向かう機関車」
提供:橋元利之氏

2. 線路はつづく-洋鋼輸入の一側面-

たたら製鉄が衰退に追い込まれた要因は欧米諸国からの安価な鉄の大量輸入や、国内における西洋の製鉄技術の直接導入が軌道に乗ったことといわれます。特に鉄道の敷設には膨大な量のレールが必要で、山陽鉄道や播但鉄道など明治期に建設された兵庫の鉄道も欧米からレールを調達しました。このようなレールの展示とともに兵庫における鉄道の歩みを振り返ります。

英国製(えいこくせい)双頭(そうとう)レール
明治3年(1870) 兵庫県立歴史博物館蔵
産業遺産学会推薦産業遺産

播但(ばんたん)鉄道(てつどう)(現、JR播但線)の英国製(えいこくせい)レール
明治26年(1893) 京都鉄道博物館蔵

明治日本の産業革命遺産写真展「日本の近代製鉄のあゆみ」

日本は幕末から明治にかけて、西洋以外の地域の中で先駆けて産業の近代化に取り組み、半世紀余りで産業国家としての地位を確立しました。このコーナーでは産業遺産情報センターのご協力により、日本の近代製鉄のあゆみについて写真パネルにより紹介します。

第4部 エピローグ

鉄とSDG’s-持続可能な社会の実現に向けた革新的な技術への挑戦-

日本製鉄株式会社瀬戸内製鉄所広畑地区は、前身の富士製鐵㈱を経て、ここ姫路の地で、長きにわたり鉄づくりを行っています。同製鉄所では、社会で発生したスクラップなどを電気炉を用いて高級鋼として製造する世界的に見ても革新的な技術を確立し、持続可能な社会の実現に寄与しています。ここでは、これからの脱炭素社会に向けたCO2削減技術を紹介します。