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姫路の地名はあったの？

『風土記』には、姫路は「日女道」と書かれています。日女は万葉仮名にもとづく表記です。ある神の船から「蚕(ひめ)子(こ)」が落ち、それが「日女道丘」に成ったと書かれています。この丘は現在姫路城がある姫山のことで、そこには女神がいたといいます。

素麺の「揖保乃糸」で有名な揖保は「いぼ」と読むの？

『風土記』の揖保里の粒丘の話では、この丘の小石がすべてご飯粒=飯穂いいぼに似ているから、「いいぼ丘」と名づけたと書かれます。揖保は「いいぼ」と呼ばれたようです。粒丘の比定地の半田山(たつの市)に登ると、今も多くの石英粒を確認できます。地元ではこれを「小米石」ともいうそうです。

赤穂の地名の読み方は？

10世紀に作られた『倭名類聚抄わみょうるいじゅうしょう』では、赤穂の地名を「阿加保 あかほ」と訓じています。『風土記』の史料が欠けているので、地名の由来は不明です。『倭名類聚抄』によると、10世紀頃、郡内には「坂越」「八野やの」「大原」「筑磨つくま」「野磨やま」「周勢すせ」「高田」「飛鳥」の8郷がありました。

佐用の地名の読み方は？

古代の佐用の地名は、「さよう」ではなく「さよ」と呼ばれていました。『風土記』には、鹿の腹の血で田植えに成功した女神に対し、ある神が「五月夜(さよ)に植えたのか」と言ったからと説かれています。鹿は害獣であるとともに神聖視され、その血は不思議な力を持つと考えられていたようです。

宍禾郡の神々は？

古代の宍禾郡は、ほぼ現在の宍粟市と重なります。宍粟は「しそう」と発音しますが、宍禾は「しさわ」と呼ばれました。『風土記』には、葦原志許乎あしはらしこお・天日槍あめのひぼこ・安師比売神あなしひめのかみ・阿和賀比売あわかひめ・伊和大神(いわのおおかみ)など、多彩な神が登場します。そのなかでもっとも有力な神は伊和大神でした。この神は中世に「播磨一宮ありまいちのみや」の神として崇敬されます。『風土記』の伊和村条によると、大神は国作りを終えた後、「おわ」(作り終えた)と言ったといいます。

神前の地名のいわれは？

神前かむさき郡のいわれは、郡内の神前山に、伊和大神の子の建石敷命たけいわじきのみことがいるからとされています。この神は託賀たか郡の法太里ほうだのさとにも登場し、戦さをする神として描かれています。これによると建石敷命は、その神名にふさわしく、猛々しい荒ぶる神と考えられていたことが分かります。

託賀郡の巨人伝承

古代の地方神話では、巨大な神が各地を歩いて、山や丘、岩場や沼などを作っていった話がみられます。『風土記』の託賀たか郡の冒頭では、むかし「大人おおひと」がここに来て、「他の国は土地が低いが、ここは高いなー」と言ったので、「託賀」＝「高」と名づけたと記されています。この大人も巨大な神の一つです。

「かも」は鴨なの

古代の賀毛かも郡の一部をなす、現在の小野市や加西市は、冬場に多くの鴨が飛来することで有名です。それは古代でも同じだったようです。『風土記』では、応神おうじん天皇の時代、郡内の鴨村に、つがいの鴨が巣を作り卵を産んだので、賀毛郡と名づけたと伝えられています。鴨という渡り鳥は「瑞兆ずいちょう」とされた生き物です。そのため古代のあちこちに「かも」の地名が付けられ、それは今も残されています。

三木の地名と関連するの

『風土記』によると、美囊みなぎ郡の地名由来は、昔、イザホワケの命(後の履中りちゅう天皇)が、郡内の志深里しじみのさとに来て、「この土地は水流みながれがとても美しい」と言ったことによるといいます。「みなぎ」の地名と「みながれ」の語呂合わせによる説明ですが、後に天皇になる皇子が、「クニを讃め」をした形になっています。現存する各国の『風土記』には、天皇・皇族や地元の神々が、土地を称賛する説話をたくさん確認できます。美囊の地名は、古代の史料で「美芸」「耳企」と書かれることがあり、ここから転じて現在の「三木みき」に定着したと考えられています。

赤石でも良いの

明石郡の地名起源説話は、『風土記』の冒頭にあったはずですが、原資料が破損しており、見ることができません。10世紀の百科辞書の『倭名類聚抄わみょうるいじゅうしょう』によると、当時の明石郡には、葛江ふじえ・明石・住吉・神戸かんべ・邑美おおみ・垂見たるみ・神戸の7つの郷さとがありました。この7つの郷のうち、垂見郷は現在の神戸市垂水区に関わる地名です。古代では、一つの地名の一つに漢字表記で固定しておらず、いろいろな書き方が出てきます。「明石」の地名も、「赤石」と書かれる場合がありました。

今は加古川ですよね

古代の賀古郡は、現在の高砂市のほか加古川市の市域と重なります。『風土記』には、郡内のある丘の形が「鹿児かこ」に似ているから、「かこ」と呼ばれるようになったと書かれています。「かこ」の地名は、「加古」と記される資料もありますが、あえて「賀古」とされたのは、朝廷が地名の表記は、「好き字」(めでたい漢字)を用いよと命じたからです。

稲美と印南

『風土記』によると、印南いなみ郡には、大国おおくに・六継むつぎ・益気やけ・含芸かんきの4つの里がありました。現在の高砂市や加古川市にみえる地名が含まれています。しかし「いなみ」の地名は、かつてかなり広域で、現在の印南野いなみの台地にも及んでいたようです。現在も印南野台地上に「稲美いなみ町」という地名が残るのはそのためだと考えられます。