長方形・被蓋造の鼓箱(二調入)である。総体を木型でつくり、なめした牛革を黒に染めて漆を塗ったものが貼られている。蓋表から側面にかけてと、身の側面にそれぞれ、波間の土坡におい立つ芦、群れ飛ぶ鶴、雲形をおく。これらは型押しによって打ち出し、彩色しており、雲形は金泥を塗る。打ち出しのない背景にも彩色ですやり霞を配するなど絵画的な意匠表現で、土坡はワニスを塗った金唐革風の輝きを呈している。また蓋裏、身の縁の内側を金梨地とするほか、蓋と身の縁に覆輪(ふくりん)を廻らせるように線目を打って区切り、身の底辺も同様にしてそれぞれ金泥を塗る。現在本器についてその制作者はもとより、制作地についても確定できるだけの資料をもたない。ただ、姫路における牛皮を用いた白なめし革の生産は、その高い品質で近世期全国的に最も著名であったが、これを素材とする文庫、煙草入れ、各種袋物などにわたる革細工も同様で、オランダから輸入された金唐革の模造でも知られていた。本器表面には、蒔絵とはまた異なった独特の風合いをもたせる粒状の「しぼ」とよばれる牛革の特徴がよく出ている。この種では大型でまとまった作域を示す工芸的手法を、時代的・地域的にどう位置づけるかなど今後の課題とされるであろうが、ひとまず素材の革自体は姫路革である可能性が高いものと考えておきたい。
資料解説
長方形・被蓋造の鼓箱(二調入)である。総体を木型でつくり、なめした牛革を黒に染めて漆を塗ったものが貼られている。蓋表から側面にかけてと、身の側面にそれぞれ、波間の土坡におい立つ芦、群れ飛ぶ鶴、雲形をおく。これらは型押しによって打ち出し、彩色しており、雲形は金泥を塗る。打ち出しのない背景にも彩色ですやり霞を配するなど絵画的な意匠表現で、土坡はワニスを塗った金唐革風の輝きを呈している。また蓋裏、身の縁の内側を金梨地とするほか、蓋と身の縁に覆輪(ふくりん)を廻らせるように線目を打って区切り、身の底辺も同様にしてそれぞれ金泥を塗る。現在本器についてその制作者はもとより、制作地についても確定できるだけの資料をもたない。ただ、姫路における牛皮を用いた白なめし革の生産は、その高い品質で近世期全国的に最も著名であったが、これを素材とする文庫、煙草入れ、各種袋物などにわたる革細工も同様で、オランダから輸入された金唐革の模造でも知られていた。本器表面には、蒔絵とはまた異なった独特の風合いをもたせる粒状の「しぼ」とよばれる牛革の特徴がよく出ている。この種では大型でまとまった作域を示す工芸的手法を、時代的・地域的にどう位置づけるかなど今後の課題とされるであろうが、ひとまず素材の革自体は姫路革である可能性が高いものと考えておきたい。