【書写山円教寺】しょしゃざんえんぎょうじ

 姫路市書写にある天台宗の寺院。書写山と号する。康保3(996)年、性空上人が開基。 伝説によれば性空は、九州で修行して法華経を修めた後、瑞雲(ずいうん)に導かれて書写山に庵(いおり)を結んだとされる。

 10世紀後半に、国司藤原季孝(ふじわらのすえたか)の寄進により法華堂が建設されて以降、堂宇の造営が盛んとなり、講堂、常行堂などの諸堂が建立された。翌年、円教寺の寺号をもって花山法皇の勅願寺となった。その後は、平清盛による一切経の施入、後白河法皇の参籠、後醍醐天皇の行幸など、天皇、貴族の手厚い保護を受けた。1331年には落雷によって堂宇の大半を焼失したが、守護の赤松氏の保護の下に復興に努めて再興した。

 現在、円教寺の国指定文化財は下の通り。

<重要文化財>

 (建造物)
 大講堂・鐘楼・金剛堂・食堂・常行堂(常行堂、中門及び楽屋、舞台からなる)
 護法堂(乙天社及び若天社)2棟・壽量院

 (仏像)
 木造釈迦如来及び両脇侍(わきじ)像
 木造四天王立像
 木造阿弥陀如来坐像(常行堂本尊)

 
【兵庫県レッドデータブック】
ひょうごけんれっどでーたぶっく

 兵庫県の健康生活部環境局自然環境保全課が編集した、県下において保全・保護の重要度が高い環境、生物を選定・収録した報告書。2003年に改訂版が刊行されている。選定されているのは、動植物種、植物群落、地形、地質、自然景観で、それぞれ基準を設定して重要度別に区分されている。

 
【性空】しょうくう

 平安時代中期の天台宗の僧(?~1007年)。九州の霧島山や背振山で修行の後、播磨の書写山に入り円教寺を開いた。花山法皇(かざんほうおう)の2度にわたる行幸をはじめ、多数の支持者を得た。晩年は、姫路市夢前町に弥勒寺を建てて隠棲(いんせい)した。

 
【六根】ろっこん

 仏教で用いられる言葉。人の感覚や意識を生みだして、さまざまな欲望や迷いを起こさせるもとになる六つの器官のこと。眼(げん)・耳(に)・鼻(び)・舌(ぜつ)・身(しん)・意(い)をいう。眼・耳・鼻・舌・身が外部からの刺激を感じ、それによって意が生じる。六根から生じる迷いを断てば、清らかな身になることができるとされ、これを「六根清浄(ろっこんしょうじょう)」という。

 
【通宝山弥勒寺】つうほうざんみろくじ

 姫路市夢前町にある、天台宗の寺院。書写山円教寺の奥の院とも呼ばれ、密接な関係がある。長保2(1000)年に、性空が隠棲(いんせい)して草庵(そうあん)を結んだのが始まりとされる。その後、花山法皇(かざんほうおう)が行幸し、播磨国司に命じて諸堂を建立させたという。

 14世紀後半に、赤松義則が建立した本堂と、本尊の弥勒菩薩および両脇侍像(わきじぞう、平安時代)は、国指定重要文化財。

 
【法皇】ほうおう

 正式には太上法皇という。太上天皇(天皇の位を譲った人。略して上皇という。)が出家した場合の称。

 
【中宮】ちゅうぐう

 広義には、皇后、皇太后(先代の天皇の后)、太皇太后(先々代の天皇の后)の三者の総称。内裏の中央の宮に住むことからつけられた呼び名である。狭義には、平安時代以降一人の天皇に対し複数の后が立てられたとき、最初に立てられた后(正規の皇后)以外のものを指す。歴史用語では、狭義の意味に用いられることが多い。

 
【守護】しゅご

 鎌倉・室町幕府で、国単位に置かれた職。初期には惣追捕使(そうついぶし)と呼ばれた。明確な制度として成立するのは、源頼朝が挙兵した直後(1180)に、有力御家人を東国諸国の守護人に任じてからである。

 守護は一国内の軍政を担当し、大番催促(おおばんさいそく:京、鎌倉の警護)、謀反人の追捕、殺害人の追捕を基本的権限とした。これを大犯三箇条(たいぼんさんかじょう)という。南北朝期になると、守護はその任国に対する権限を強め、守護大名へと変質していった。

 
【赤松氏】あかまつし

 中世播磨の豪族。赤松は佐用荘内の地名。赤松則村(円心)が足利尊氏に属し、新田義貞との戦いに勝利して守護に任じられた。後には備前、美作の守護にもなり、幕府の四職(ししき、室町時代の武家の家格。三管・四職と総称する。三管とは管領に任じられる、斯波(しば)、細川、畠山の三家、四職とは侍所頭人に任じられる、赤松、一色、山名、京極の四家をいう)として室町幕府の重臣となった。

 しかし1441年に赤松満祐(あかまつみつすけ)が将軍足利義教を殺し、幕府軍の攻撃を受けて一族は没落した(嘉吉(かきつ)の乱)。その後赤松政則が再興したが、家臣であった浦上氏、宇喜多氏に領国を奪われ、さらには関ヶ原の戦いで西軍に属した赤松則房が戦死。一族は断絶した。

 赤松義則(1358~1427)は、室町時代の武将。赤松満祐は義則の嫡男、政則は玄孫にあたる。